産経新聞(4月15日付)の記事によると、政府は旧宮家系国民男性の
皇籍「取得」案について、3つのやり方を考えているようだ。▽内親王と旧宮家系男性の結婚。▽宮家の養子に入る。▽そのまま皇籍取得。
これらの中で、内親王と旧宮家系男性の結婚による取得方法を“最初”に持って来ているのは、他のやり方と比較して、政府関係者がより“自然”な形と考えたからだろう。
確かに皇室典範において、皇族以外の者が皇籍を取得できるのは、皇族との結婚によって“のみ”(15条)とされている(養子はむしろ明文の規定によって否定。9条)。その考え方を前提として、内親王との結婚が優先項目とされたのだろう。しかし、よりによって内親王の結婚を、旧宮家系男性の皇籍取得の「手段」の1つと位置付ける感覚は、常軌を逸していると言う他ない。内親王の“人間としての尊厳”をどう考えているのか(勿論、旧宮家系男性も同じく)。私は以前、以下のように指摘した。「(女性天皇)“反対派”の態度として非常に問題なのは、
『女性皇族と旧皇族(子孫)の婚姻を』などと、他人の人生をまるで
将棋の駒のごとく扱う発言が多いことです」
(週刊ポスト1月17日・24日号)まさか、政府自身が内親王の「人生を将棋の駒のごとく扱う」
発想でいたとは。皇室法研究の第一人者で元最高裁判事の園部逸夫氏も、
皇位の安定継承を巡る多様な対応案を列挙された中で、
側室制度案と共に「内親王・女王の配偶者を旧皇族の男系男子子孫
など過去の天皇の男系男子子孫に限定する案…は、
国民の受け止め方や当事者・関係者のお気持ちを考慮して対応案
から除いて」おられた(『皇室法入門』)。端(はな)から選択肢としてあり得ないということ。
それを敢えて持ち出した“心ない”政府の姿勢が、内親王殿下方
ご本人に知られないはずはあるまい。その事実をお知りになった、お若い内親王殿下方がどれだけ不快な、
悲しいお気持ちになられるか(更にそのご家族も)。
想像するだけで、申し訳なさに身が縮む思いがする。
又、圧倒的多数の国民も、こうした非人道的なやり方には、
強い嫌悪感を抱くに違いあるまい。現実的には万が一にもあり得ないだろうが、内親王と旧宮家系男性の
「強制」的な結婚が取り沙汰されること自体、国民の皇室への
素直な敬愛の気持ちを大きく傷つけるものだ。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
BLOGブログ